「また同じ間違いをしてしまった……」
「気をつけてたはずなのに、なぜか同じ失敗を繰り返す」
そんなふうに、自分にがっかりしてしまったことはありませんか?
実はこれ、ギフテッド(またはギフテッドかもしれない人)にとても多い悩みのひとつなんです。
「頭が良いはずなのに、なぜ?」
「わかってるのに直せないのは、怠慢なのか?」
そう自分を責めてしまう人もいますが、それは誤解です。原因は「能力の低さ」ではなく、「脳の使い方のクセ」にあるかもしれません。
この記事では、「同じミスを繰り返しやすい」ギフテッド特有の原因を、脳科学・心理学・動機づけ理論の観点から詳しく解説します。
後半では、日常生活で使える具体的な対策も紹介していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
なぜギフテッドは「同じミス」を繰り返すのか?
1. ワーキングメモリの使い方に偏りがある
ギフテッドの多くは、思考力が高い一方で、ワーキングメモリ(作業記憶)に偏りがある傾向があります。
ワーキングメモリとは、「一時的に情報を保ちながら、同時に処理する力」のこと。たとえば料理をしながらレシピを思い出す、友達の話を聞きながら返信内容を考える、といった場面で使われます。
この力にアンバランスがあると、
- 「前回どこで失敗したか」が頭から抜けてしまう
- 別のアイデアに夢中になって過去の教訓を忘れる
- 同じシチュエーションで、自動的に「前と同じ行動」を選ぶ
──ということが起こりやすくなるのです。
2. 内発的動機づけと外的強化のギャップ
ギフテッドの多くは、「自分が納得したこと」しか本気で取り組めません。これは内発的動機づけ(自分の中から湧いてくるやる気)が強いからです。
一方で、「やる気スイッチ」が入らない場面では、外的強化(報酬や罰)に頼って行動するのが難しい。
そのため、「ミスを減らそう」と思っても、
- 「なぜそのミスがいけないのか」に納得できない
- 「直す意味」に腹落ちしていない
- 「怒られるから直そう」が機能しない
──こういった状態になることがあります。
結果として、「反省はしているのに、改善ができない」という現象が起こるのです。
3. 強迫観念と焦燥感が判断を曇らせる
ギフテッドの中には、強迫観念(〇〇しなければという強い思い込み)や、焦燥感(急がなきゃという内的な焦り)に悩まされる人がいます。
たとえば──
- 「間違ったら終わりだ」
- 「また失敗したら嫌われるかも」
- 「ちゃんとやらなきゃ、期待に応えなきゃ」
──という強いプレッシャーのもとで動くと、冷静な判断力が失われます。
焦って作業を進めて、「注意すべきポイント」をすっ飛ばしてしまう。これが繰り返しミスの典型パターンです。
4. コンコルド効果で「引き返せない」
コンコルド効果とは、「ここまでやったから、今さらやめられない」と考えてしまう心理のことです。
たとえば──
- 明らかに失敗ルートなのに、見直す時間が惜しくて進めてしまう
- 修正が面倒で、前と同じやり方で済ませてしまう
──というように、行動のコストを下げるために、あえて同じ失敗を選ぶというケースもあります。
これは「間違いとわかっていても、やめるほうがつらい」から起こる現象です。
ギフテッドに多い「整合性」と「同一性」のしばり
ギフテッドには、「思考と行動の整合性を保ちたい」という強い傾向があります。
また、「昨日の自分と今日の自分は、一貫していたい」という同一性の保持も重要視します。
この2つのこだわりが、次のような誤作動を起こすことがあります。
- 「過去の選択を否定したくない」から、やり方を変えられない
- 「人に流されず、自分の信念を貫くこと」が先に来てしまう
- 「言ったことを変えるのはダサい」と感じてしまう
つまり、「前と同じ失敗」だと頭ではわかっていても、「整合性」や「同一性」を守るために、あえて繰り返してしまうのです。
このように、自分の中のこだわりが、行動の柔軟性を奪っているというのも、ギフテッド特有の傾向です。
じゃあどうすればいいの?──ギフテッド向け「繰り返しミス」対策
1. 行動のログを取って「見える化」する
同じミスを繰り返す原因のひとつは、記憶のあいまいさにあります。
だからこそ、感情に頼らず、「見える形」で記録することが重要です。
おすすめは、次のような方法:
- その日うまくいかなかったことを1行メモする
- 「何が原因だったか」も自分なりに書いておく
- 翌日にそのメモを見返してから作業を始める
たったこれだけでも、「気づきの蓄積」がワーキングメモリの負担を減らし、ミスの再発防止につながります。
2. 「整合性より優先するもの」を明確にしておく
ギフテッドがよく陥るのが、「間違ってても、一度言ったことを変えられない」というパターン。
でも、その背景には、「間違えること=信念がブレること」という誤った前提が潜んでいます。
それを防ぐには、あらかじめこう決めておくことが有効です:
- 「間違ってもOK。大事なのは学ぶこと」
- 「正確さ>整合性」
- 「改善できる人が一番かっこいい」
つまり、自分の中の優先順位を書き換えることで、「やり方を変える」ことに対するブロックを減らせるのです。
3. あえて「小さな違和感」に敏感になる
同じミスを繰り返す人の多くが、違和感を無視するクセを持っています。
「あれ?」「なんか変?」という感覚を軽視せず、
- その場でメモを取る
- いったん作業を止めて確認する
──という行動がとれるだけで、ミスの多くは回避できます。
この「違和感に素直になる」という感覚は、演繹的思考(一般ルールから具体を考える)に偏りやすいギフテッドにとって、感覚側の補助輪になるからです。
4. 外的強化をあえて「使い分ける」
内発的動機づけが強い人は、外的な報酬(ごほうび)や罰を「ダサい」と感じがちです。
でも、自分の意志だけで立て直せない時こそ、「環境を仕掛けとして利用する」ことが有効です。
たとえば:
- 「終わったらコーヒー飲んでいい」などの条件つき報酬
- スマホの通知を遮断して強制的に集中
- 誰かに「やったか」報告する仕組みを作る
これは外的強化を自分でデザインするという形で、自尊心を守りながら行動を最適化する方法です。
5. 「思考のこだわり」ではなく「行動の成果」に注目する
ギフテッドは思考にこだわりすぎるあまり、「やる前に考えすぎる」傾向があります。
でも、考えたことがすべて正しいとは限らないし、正しい行動は「思いついた後」から始まるのです。
そこでおすすめなのが、次のような問いかけです:
- 「結果としてどうだったか?」
- 「考えた通りになった?」
- 「実際にうまくいった行動は何?」
このように、成果ベースで振り返る習慣を持つことで、過去のパターンから抜け出せます。
まとめ:同じミスは「能力の低さ」ではなく「思考のループ」から来ている
「同じミスを何度もしてしまう」
──この悩みは、決してあなたが怠けているからではありません。
むしろ、深く考えすぎるがゆえに、思考のループに閉じ込められていることが原因なのです。
ギフテッド特有の:
- overexcitability(感情や感覚の過敏さ)
- 整合性の一致への強い欲求
- 同一性の保持=ブレない自分でいたいというこだわり
──これらがミスの再発を招いている可能性が高い。
だけど、ここまで読んでくれたあなたなら、気づくことで改善できるはずです。
焦らず、自分に合った仕組みや見直し方法を試してみてください。
少しずつでも、「ミスのパターン」から脱出できる力は、あなたの中に必ずあります。