はじめに
「自分は何でもすぐに新しいことに挑戦したくなる。でも、続かないことも多くて、落ち着けない感じがする…」
そんな思いを持つ人は、もしかするとギフテッド（才能の高い人）かもしれません。
特にまだ自覚していない人には、自分の「多動的な挑戦欲求」の理由がわからず、悩みが大きくなりがちです。
この記事では、ギフテッドの特徴としてよく見られる「新しいことにすぐ飛びつく性質」がなぜ起きるのか、原因を深掘りしつつ、日常生活でのコントロール法や解決策を詳しく解説します。
1. 「すぐに新しいことに挑戦したくなる」症状とは？
ギフテッドや高い才能を持つ人には、一般的に「新奇性追求性（しんきせい ついきゅうせい）」が強い傾向があります。
これは、未知のものや新しい経験に強く惹かれ、飽きることなく探求したいという性質です。
具体的には、
- 新しい趣味やスキルにすぐ飛びつく
- 1つのことをやり始めても、次々に別の興味が湧く
- 何か物足りなさを感じてじっとしていられない
- 周囲から「飽きっぽい」「落ち着きがない」と言われやすい
などが典型的な特徴です。
これは本人の意思の弱さや怠けではなく、脳や認知の特性によるものが大きいです。
2. なぜギフテッドは新しいことに挑戦したくなるのか？原因を科学的に解説
2-1. Overexcitability（オーバーエキサイトビリティ）とは？
ギフテッドに多いのが「オーバーエキサイトビリティ（OE）」という状態です。
OEとは「感覚や感情、知的刺激に対して通常より強く過敏に反応する特性」を意味します。
OEには主に5種類あり、その中の一つが「知的OE」です。
知的OEが強いと、脳が新しい情報や挑戦を得たがり、好奇心が旺盛になるため、常に新しいことに挑みたくなるのです。
2-2. 多動との関係
多動は「じっとしていられない、動き回りたい衝動」を指しますが、ギフテッドに多動傾向が見られることがあります。
これは単なる「落ち着きのなさ」ではなく、脳が多様な刺激を求めることで起きています。
多動と新奇性追求性はセットで現れることも多く、これが「すぐに新しいことに挑戦したくなる」行動の一因です。
2-3. 脳内ドーパミンの影響
脳の報酬系を活性化する神経伝達物質「ドーパミン」も大きな役割を担います。
ドーパミンは新しいことに挑戦したときや成功したときに分泌され、「快感」と「やる気」を生み出します。
ギフテッドはドーパミン分泌や感受性が一般的に高い傾向があり、新しい刺激やチャレンジでドーパミンが過剰に分泌されると、挑戦欲求がどんどん増していきます。
2-4. 先見の明と演繹的思考・帰納的思考
ギフテッドは「先見の明」があると言われることが多いです。
これは、過去の経験や知識を元に将来の可能性を予測する能力。
この能力は「演繹的思考」と「帰納的思考」の組み合わせで成り立っています。
- 演繹的思考：一般的な原理やルールから具体的な結論を導く方法
- 帰納的思考：具体的な事例や経験から一般的な法則やパターンを見つける方法
先見の明があると、ギフテッドは「この新しいことに挑戦すると未来に意味があるかも」とすぐに考え、挑戦の衝動が強くなるのです。
2-5. 強迫観念の関与
一方で、「すぐ挑戦したくなる」が強迫観念のように感じることもあります。
強迫観念とは「やらなければならない、逃げられないと感じる思考や衝動」のこと。
能力や才能に無自覚なギフテッドは、
「やらなければ損だ」
「今挑戦しないと置いていかれる」
と過剰に感じてしまい、強迫観念的に新しいことに手を出す場合があります。
3. 「すぐ挑戦したくなる」ことのメリットとデメリット
メリット
- 好奇心が強いので幅広い知識や経験が得られる
- 多角的に物事を見る力が高まる
- 先見の明を活かし、未来志向で動ける
- 柔軟な思考が鍛えられやすい
デメリット
- 1つのことが続かず成果が積み上がらない
- 自分の能力を過信または過小評価しやすい
- 周囲から理解されにくく孤立感が出ることも
- 強迫観念に苦しみやすい
4. 「すぐに新しいことに挑戦したくなる」原因のさらに深い理解
4-1. 能力に無自覚なギフテッドの自己認識のズレ
ギフテッドの中には、自分の能力や特性に気づいていない人も多いです。
この「能力に無自覚」な状態だと、次々と新しいことに手を出しても、自己評価が追いつかず、結果的に焦燥感や不安感に繋がります。
「やらなければいけない」という強迫観念が裏で動き、達成感を感じにくいことで、また新しい刺激を求めてしまう悪循環が生まれやすいのです。
4-2. ギバー（与える人）タイプと挑戦欲の関係
ギフテッドの中には、他者に対して非常に敏感で「ギバー（与える人）」タイプの人もいます。
彼らは周囲の期待に応えようとして自分の能力以上に動きがちで、新しいことを「できる自分」である証明として次々挑戦しがちです。
これをオーバーアチーバーと言います。自己犠牲的になりやすく、疲弊の原因にもなります。
4-3. 演繹的思考と帰納的思考のバランスの難しさ
演繹的思考（一般原理から具体へ）に偏りすぎると「新しいことに挑戦しなければ最適解を逃す」と思い込みやすくなり、逆に帰納的思考（具体から一般へ）に偏ると過去の成功体験に固執しやすくなります。
ギフテッドはこの2つの思考のバランスを取るのが難しい場合が多く、特に演繹的思考に頼りすぎると「次々新しい挑戦」に囚われやすくなります。
5. 解決策：すぐ挑戦したくなる気持ちとどう付き合うか？
5-1. 自己理解を深めることが最優先
自分の能力や特性を正確に理解することから始めましょう。
- 能力に無自覚な状態を改善するために、信頼できる専門家の診断やカウンセリングを受けるのも有効です。
- 日記やメモで「挑戦したいこと」と「それによって得られる価値や意味」を整理してみる。
- 自分の感情や体の反応を観察し、過度な焦りや強迫観念がないかチェックする。
5-2. 新奇性追求性を満たしつつ、継続性を育てる工夫
新しいことに挑戦したい衝動を無理に抑え込むのではなく、うまく活かす方法を考えます。
- 小さなステップに分けて挑戦する。
- 「学びの期間」を意識して、一定期間はひとつのことに集中する時間を設ける。
- 進捗や成果を見える化し、自己肯定感を高める。
5-3. ルーティンや習慣を取り入れる
多動や強迫観念に対抗するために、日常のルーティンを整えましょう。
- 朝や夜に「やることリスト」を作成し、優先順位を決める。
- 深呼吸や瞑想、軽い運動などで心身のバランスを整える。
- 環境を整え、誘惑を減らす工夫（スマホの通知オフなど）。
5-4. 他者との関わりで客観的な視点を得る
ギバー気質の人は特に、他人の期待に振り回されがちです。
- 自分のペースを尊重してくれる理解者やコミュニティを持つ。
- 他者の意見を聞きつつも、自分の内なる声を大切にする練習をする。
- 必要なら「ノー」と言うことも勇気を持って。
6. まとめ：ギフテッドの挑戦欲は才能の証、でもコントロールが大事
ギフテッドが「すぐに新しいことに挑戦したくなる」のは、脳の特性や思考スタイル、感受性が高いことに起因しています。
これは強みでもありますが、適切にコントロールしなければ負担になることもあります。
自己理解を深め、バランスの取れた行動設計をすることで、豊かな才能を無理なく発揮できるでしょう。
