「あ、それなんとなくわかる」
「そうなると思ったんだけど、いざ理由を説明しろと言われるとうまく言えない」
こんなふうに感じたことはありませんか?
もしかするとあなたは、「直感で全体を把握してしまう」タイプかもしれません。
これは、一般的な思考スタイルとはちょっと違います。だからこそ、理解の仕方に「ギャップ」が生まれやすいのです。
この記事では、「直感的に理解してしまって説明できない」ギフテッドの悩みについて、
- なぜそれが起こるのか?
- どんな能力が背景にあるのか?
- どうやったらラクになるのか?
を解説していきます。
2. 「直感で理解」は、実は高度な能力のあらわれ
先に結論を言います。
「直感で理解してしまって説明ができない」人は、実はかなり高度な認知能力を持っています。
これはいわゆる「ギフテッド」の特徴の一つであり、以下のようなキーワードに深く関係しています:
- overexcitability(過度激動性)
- メタ認知
- 抽象力
- 構造理解
- 全体把握能力
- ワーキングメモリ
- 非同期発達
- 演繹的思考
このうち、あなたに当てはまるものがいくつかあるかもしれません。ひとつずつ簡単に解説していきましょう。
3. それぞれの専門用語をカンタンに解説
overexcitability(オーバーエキサイタビリティ)とは?
感情や感覚、思考など、あらゆる面で「反応が強い」特性です。
音やにおい、人の気持ちなどに過敏で、考えすぎたり感じすぎたりしやすい傾向を指します。
メタ認知とは?
自分の考えていることを、もう一人の自分が「見ている」ような感覚のことです。
例えるなら「頭の中にもう一人の自分がいて、自分の思考を実況中継しているような感じ」です。
抽象力とは?
目に見えるものや具体的な例から、法則や共通点などの「抽象的な考え方」を導き出す力です。
たとえば、「犬」や「猫」や「カラス」を見て「動物」と分類できるのも抽象力の一つです。
構造理解とは?
物事のつながりや、仕組み・ルール・構造を直感的に捉える力です。
言葉で細かく教えられなくても、全体像がすぐに「見える」ような人は、構造理解力が高い傾向があります。
全体把握能力とは?
一部の情報を見ただけで「全体像」が思い浮かぶような能力です。
たとえば、文章の冒頭やプレゼンの導入だけで「この人が言いたいことはこうかな」とピンとくる、あれです。
ワーキングメモリとは?
一時的に情報を「頭に載せておく」能力のこと。
例えば、買い物リストを5個覚えておいて、脳内で「野菜→牛乳→たまご…」と順に取り出していくときの働きです。
非同期発達とは?
精神年齢・学力・感情・身体などの成長スピードがバラバラな状態を指します。
頭の中は高校生でも、体は小学生だったり、逆に行動は大人でも感情が幼かったりすることがあります。
演繹的思考とは?
「AならばB、BならばC、だからAならばCだよね」というように、前提から論理的に結論を導く考え方です。
全体から部分を導くトップダウン型の思考法ともいわれます。
4. 「直感的に理解してしまう脳」はどう動いてる?
直感的にわかるというのは、ただの「なんとなく」ではありません。
情報を一気に、全体として、同時並行的に処理してしまうという脳の特徴によって起きる現象です。
これはたとえば、次のような人に当てはまります:
- マニュアルを読まなくても、見ているだけで使い方がわかる
- 図や全体像のほうが、言葉より早く頭に入る
- 結論から先に浮かんでしまい、そこに至る理由はあとづけ
これらの思考傾向には、以下のような能力が深く関係しています:
- 構造理解=仕組みをパッと見抜く力
- 全体把握能力=最初から地図を持ってるような感覚
- 演繹的思考=パターン化された論理を瞬時に見抜く
- 抽象力=現象の背後にある「法則性」を察知
そのため、ひとつひとつの細かい説明ではなく、「全体の構造を一気に読み取る」スタイルになりやすいのです。
でもここに、ある「ズレ」が生じます。
5. 説明できないのは「理解してない」からじゃない
多くの人は、「順を追って理解する」というスタイルを取ります。
だから、「ちゃんと説明して」と言われたときには、
1. 前提
2. 理由
3. 結論
という順番で話すことが求められます。
しかし、あなたの思考はこの順番とは逆のことが多いはずです。
つまり、
● 先に「結論」がパッと浮かぶ
→ あとから理由や構造を整理しようとするけど、うまく言葉にできない
この順番の違いが、「理解してないと思われる」原因になってしまいます。
実際には、あなたはもう全体を把握している。でも、細かい説明に変換する時間が足りない。
だから焦ったり、言いよどんだりしてしまうのです。
6. ズレや誤解が起こりやすい場面あるある
この「直感的理解タイプ」の人が、特につまずきやすいのはこんな場面です。
学校の授業やテスト
・「わかってるのに、記述問題で点が取れない」
・「選択問題は強いけど、説明せよ系は苦手」
→ 論理の組み立てより、全体の構造が頭にあるタイプによくあります。
職場での説明・報連相
・「なぜそう思ったのか根拠を示して」と言われて詰まる
・「結果だけ伝えてしまって、プロセスを飛ばしてしまう」
→ 説明の言語化が苦手なことと、説明が冗長に感じることが原因です。
人間関係のズレ
・「そんなの当たり前でしょ」と思ってしまい、説明を省いて誤解される
・逆に、相手の説明がまどろっこしくてイライラしてしまう
→ 理解速度の差や、抽象的な理解力の違いから摩擦が起きがちです。
このようなズレを経験して、「自分って説明下手なのかな」「人より劣ってるのかな」と感じてしまった人もいるかもしれません。
でも、それは誤解です。
むしろ、理解の仕方が高度すぎて「言語変換に時間がかかる」だけなのです。
7. 解決策①:「アウトプット習慣」で翻訳力をつける
「理解できているのに説明できない」ことへの一番の対策は、アウトプットの習慣化です。
あなたの頭の中では、すでに「構造」や「結論」はできあがっているはず。
でもそれを「人に伝わる言葉」に変換するのは、筋トレのように少しずつ鍛えていくしかありません。
おすすめのアウトプット法
- 自分だけに向けて説明する
「この考えを、小学生に教えるとしたらどう言うかな?」と想像して書いてみる。 - 図にしてみる
言葉より構造が得意な人は、矢印やフロー図にすると理解も表現も深まります。 - SNSやブログに思考断片を残す
140字で説明しようとすると、逆に要点が磨かれていきます。
大事なのは、人のために説明する前に、自分の中で「翻訳」を練習しておくことです。
8. 解決策②:「言葉以外の伝え方」もOK
説明は、必ずしも「言葉」だけじゃありません。
図・比喩・例え話・ジェスチャー・モデル図・プログラムなど、あなたに合った表現スタイルがきっとあります。
たとえば…
- 抽象が得意な人は、例え話で抽象と具体を行き来する
- 構造が見える人は、マインドマップやフローチャートを使う
- 視覚優位な人は、図解・絵・色分けなどが伝達手段になる
あなたにとって自然な伝え方=他人にとっても理解しやすい伝え方になる可能性があります。
自分に合った「翻訳手段」を模索してみましょう。
9. 解決策③:「説明しない」という選択肢もある
もうひとつ、見落とされがちですが大事な選択肢があります。
それは、「無理に説明しなくてもいい」と自分に許すことです。
あなたはもしかしたら、「説明できない=ダメ」と思い込まされてきたかもしれません。
でも実際には、こういう理解の仕方をしている人はとても少なく、貴重な存在です。
わからない人に合わせて無理に言葉に変換し続けると、自分の思考が歪みます。
だから時にはこう言っていいんです。
「うまく説明できないけど、なんとなく全体をつかんでる感じがする」
それを否定する人は、あなたの思考を受け取れる土台がまだできていないだけ。
伝える努力をしても通じなかったら、それはあなたの責任ではありません。
10. 最後に:「説明できなさ」は、あなたの思考が深すぎる証拠
「直感的に理解してしまって説明できない」という悩みは、表面的には「能力の欠如」のように見えるかもしれません。
でも、実は逆です。
あまりにも思考が高速・高度・抽象的だから、言葉が追いついてないだけなのです。
だから必要なのは、
- アウトプットで翻訳力を少しずつつけていくこと
- 自分の「伝え方」を探すこと
- そして、無理に言語化しない勇気を持つこと
「わかるけど言葉にできない」──それはあなたの才能であり、可能性です。
言葉にしきれないその深さを、大切にしていってください。
きっとそれは、あなた自身だけでなく、誰かの未来をも照らす力になります。